私が鼻のシリコンプロテーゼ使用を好まない理由 #3(鼻プロテーゼ抜去、鼻シリコン抜去、拘縮鼻手術)

シリコンプロテーゼは現在もアジア圏はもちろん、
世界的に見ても鼻背を高くするために最も多く使われている材料です。
「鼻整形」といえば「シリコン」を思い浮かべるほど、直接的に結びついています。
特にアジアでは、医師も患者様も「鼻整形」をするときには
当然シリコンを使うものだと認識されていることをよく目にします。
これは鼻整形において非常に不適切で、危険でさえある考え方です。
たとえばワシ鼻(ハンプ)修正手術や斜鼻手術のように、鼻筋を高くすることが目的ではない
鼻整形でも、シリコンを使用した患者様を多く見かけます。
こうした患者様が修正手術のご相談に来られて診察してみると、シリコンが鼻の形と機能に
まったく役立っておらず、むしろ副作用を引き起こしているケースを多く見ます。
実のところ、長年鼻の修正手術を行う中でシリコンや人工物による副作用を数多く見てきたため、
いつかこれについて体系的にまとめて発表したいと考えていました。
そこで今日は「私が(鼻整形をするとき)鼻のシリコン使用を好まない理由」というタイトルで、
それぞれの副作用についての症例研究を用意しました。

鼻整形後、シリコンプロテーゼによって現れる副作用
- 1. 物理的な圧迫により、鼻先の皮膚や鼻の中の粘膜からシリコンが突き出てくる場合
- 2. シリコンまたは併用した人工物による急性・慢性の感染
- 3. 被膜形成と炎症による拘縮
- 4. 修正手術後もシリコンが繰り返し曲がる場合
- 5. 鼻先まで入っているシリコンにより鼻尖軟骨が変形した場合
- 6. シリコンに石灰質が沈着し、鼻背がでこぼこに突出した場合
- 7. 鼻背の皮膚が薄くなって赤く変化し、シリコンが透ける場合
- 8. 鼻背(シリコン被膜の内部)に繰り返し血腫がたまる場合
シリコンプロテーゼで鼻整形をした後に副作用が現れる確率は、発表された
論文によって少しずつ異なりますが、4~36%とやや幅があります。
その理由は、副作用を診断した時期がいつかによって差が出るためです。
副作用のうち最も多いのが拘縮(34.8%)、プロテーゼの曲がり(30.1%)、
炎症(10.1%)、皮膚が薄くなる(19.9%)、穿孔による突出(5%)などです。
この症例研究は全8回のシリーズで続きますので、ぜひご覧ください。

被膜形成と急性・慢性の感染による
拘縮(Contracture)
<拘縮の必須条件>
01 シリコン
02 被膜
03 炎症反応*
04 組織損傷(Trauma)
シリコンで鼻整形をした後に修正手術に至る
最も多い原因は拘縮で、感染や穿孔よりはるかに多くみられます。
拘縮とは、シリコンが体内に入ると免疫的な防御機構によってシリコンの周囲に被膜が形成され、
被膜にコラーゲン線維が多く蓄積すると被膜が厚くなって周囲の皮膚を縮ませ、
これによって鼻が短くなり、鼻先が変形することを「拘縮」といいます。
シリコンプロテーゼが鼻の中に長くあるほど、拘縮が生じる確率は高くなります。
シリコンによる鼻の拘縮が生じる確率は1.3-30%と幅があります。
これも、診断する時期と基準によって差が生じます。
*炎症反応-subclinical infection of the foreign material, especially with Staphylococcus epidermidis and Propionibacterium acnes

PH
40代女性。10年前、外部からの衝撃で鼻骨を骨折した後、鼻炎と副鼻腔炎を発症しました。
シリコンを用いた鼻の手術を4回受けています。
CC
鼻先が上を向き、鼻孔が見えています。鼻背は厚みがあります。
鼻背が重く、圧迫感と頭痛があります。鼻づまりは左右ともひどい状態です。
P/E
鼻背が厚く、固まったように見えます。鼻は短く、上を向いています。鼻孔が上に引き上げられています。

シリコンは眉の始まる位置まで上がっており、鼻先の変形が非常に強く、鼻先が上に引っ張られて、
鼻孔は「11」の字のように細長くなっていることが確認できます。

左右とも、鼻中隔と鼻甲介のあいだに粘膜の癒着があります。

(手術方法)
シリコンと被膜、瘢痕組織を除去します。右胸の下から第7肋軟骨と軟骨膜を採取します。
自家肋軟骨で「L」字型のフレームを作って骨格とし、希望の長さを確保し、
鼻尖軟骨は「L」字型の骨格の先端に掛けます。
鼻中隔と鼻甲介のあいだの粘膜の癒着は高周波で剥がし、再び癒着しないようにパッキングを行います。

(手術結果)
手術から一か月後の写真では、鼻の長さが十分に伸びて鼻孔が隠れています。
しかし、鼻背が広く厚いため、まだ腫れているように見え、不自然です。
手術後5か月の写真では鼻背がかなりすっきりして鼻筋が細くなり、
鼻の長さもさらに伸びたことが分かります。

手術後5か月が経つと鼻先と鼻背がすっきりし、鼻柱の手術跡もほとんど見えません。
手術前は鼻先が上に引っ張られ、鼻孔が「11」の字のように長く伸びていましたが、
手術後5か月には自然になりました。

鼻の長さは十分に伸び、すっと通っています。
鼻筋も手術後、次第にすっきりとしてきており、
同種真皮で高くした鼻背の高さは、手術後5か月の写真でもそれほど低くなっていません。
このようにシリコンと被膜を除去した後、同種真皮で鼻背の高さを補うことには、
皮膚が薄くなった患者様にとって、高さと皮膚の厚みの両方を補えるという利点があります。

手術後、時間の経過とともに鼻の長さはもう少し伸びました。
これは、腫れと瘢痕組織が減って鼻の皮膚に余裕が生まれ、伸びたものと考えられます。
鼻の長さと高さ、角度などが自然になりました。

2年前にシリコンで隆鼻術を受けた後、鼻先が赤くなり、
腫れる炎症反応が強く現れ、急激に鼻が上を向いてきたとのことです。
鼻先と鼻背が厚く固まり、赤く炎症反応がみられます。鼻先が強く上を向き、ねじれた変形があります。
=>1次手術として抜去を行い、一か月後に自家肋軟骨を用いた拘縮鼻修正手術を行いました。

手術後まだ4か月しか経っていませんが、鼻の長さは完全に回復し、鼻の形もとても自然になりました。

拘縮によって上に引っ張られていた鼻先が、自然にゆるんで降りてきました。


15年前の交通事故で顔をけがした後、シリコンで鼻整形を受けましたが、1年でシリコンのみ抜去しました。
現在は鼻孔の非対称があり、鼻が強く上を向いています(拘縮)。
=> 除去と同時に自家肋軟骨で鼻の長さを延ばし、鼻背は同種真皮で高くしました。
除去の過程で、患者様ご本人が知らなかったメドポアが鼻柱から見つかり、その周囲に強い炎症反応がみられました。
メドポアによる強い炎症が拘縮を引き起こしたものと思われます。


3年前にハンプを削り、シリコンと鼻中隔軟骨で鼻整形を受けました。
現在は鼻先が上を向いて丸くなり、眉間と鼻背が厚くなっています。
=> クローズ法でシリコン、被膜、軟骨移植物などを除去し、単純再配置を行いました。

曲がったシリコンを抜去し、被膜と鼻中隔軟骨の移植物をすべて除去して、鼻先の単純再配置を行いました。
このように、拘縮鼻の修正は、シリコンと被膜、そして瘢痕組織を除去することが重要な出発点です。
