01. 魔女のあご(Witch’s chin)
あご先が下へ垂れ下がり、あご下のシワがはっきりしてきます。(Submental crease)


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あご先の骨の輪郭手術後に、あご先の軟部組織、特に筋肉の起始部が剥がれて、あご先が下がる現象
Mentum Correction
いわゆる「魔女のあご(Witch’s Chin)」と呼ばれるオトガイ下垂(Chin Ptosis)は、オトガイ形成術(Genioplasty)後に現れる副作用で、輪郭手術の際にオトガイ筋(Mentalis Muscle)が骨から剥がれた後、下へ垂れ下がることで現れる変形です。
特徴としては、あご先が長くなり、オトガイ筋が離れることで下唇も下へ垂れ下がって口を閉じにくくなります。そのため口を閉じる際に力を入れる必要があり、あご先に梅干しジワができます。また、オトガイ筋が締めつけられるような圧迫感や、唇とあご先が下へ引っ張られる感覚を覚えることもあります。
また横顔では、あご先が下へ垂れ下がることで、あごから首へと続くフェイスラインが折れ込む「あご下のシワ(Submental Crease)」が現れます。
あご先が下へ垂れ下がり、あご下のシワがはっきりしてきます。(Submental crease)


特に口の力を抜いたときに、あご先が長く垂れ下がります。


下唇が下がることで、下の歯が露出します。


唇とあご先に強く力を入れないと、口を閉じることができません。


口を閉じるときに、あご先に小石を並べたようなシワが現れます。


オトガイ筋の盛り上がり(Clump)と梅干しジワ(Dimpling)が見られます。


オトガイ下垂(魔女のあご)とは、あご先の骨の輪郭手術後に、あご先の軟部組織、特に筋肉(Mentalis muscle)の起始部(origin)が剥がれて(displacement)、
あご先が下がる現象を指します。
- 原因:オトガイ骨縮小術(Reduction Osseous Genioplasty, Intraoral Osseous Burring)、あご先のプロテーゼ抜去
- 解剖学的メカニズム:オトガイ筋の偏位(Displacement)と下垂、あご先の脂肪組織の萎縮、被膜拘縮
Anatomical Mechanism of Chin Ptosis(Witch’s chin)
あご先の手術のために口腔内を切開する際は、歯ぐきの溝(sulcus)から約1cm上方の位置で粘膜とオトガイ筋を切開した後、
オトガイ筋を骨から剥離します。
このように剥離を行い、骨の手術が終わると切開部を縫合しますが、

i 筋肉を切開する際に起始部(骨)に筋肉をほとんど残さなかった場合や、
ii 「T字骨切り」「後方移動術」「骨切除術」のように広範囲に剥離した後、あご先の骨を小さくして後方へ移動させることで骨と筋肉の間にgapが生じた場合、
骨に付着していたオトガイ筋の起始部が元の位置に縫合(reapproximation)されず、オトガイ筋がまるでゴムが切れたかのように垂れ下がります。
上記5つの方法の手技と効果を順に見ていきます。
この術式は1989年にZide博士が初めて提示したもので、その後さまざまな改良を経て現在に至っています。
基本的な考え方は、下へ落ちたオトガイ筋を本来の上方へ引き上げることです。しかし、すでに剥離によって筋肉を固定する固定点(anchor point)となる組織がないため、骨にしっかり付着させる目的で歯槽骨に穴をあけ、筋肉にかけた糸をそこに通して骨に固定することで、再び下垂しないようにしました。
この手術で注意すべき点は、前歯の歯根を避けて穴をあけ固定することで、神経損傷を予防できるということです。

Barry M. Zide, M.D., D.M.D., and Joseph McCarthy, M.D.
Plastic and Reconstructive Surgery, March 1989
あごが下垂し、長く、後退している患者様に対して、あごの下垂を予防しながら輪郭を美しく自然に整える手術方法:
骨を切って前方へ移動(advancement or jumping osteotomy) + Mentalis Resuspension

この方法は、あご下を切開した後、図のように皮膚と表情筋を後方へ引いて重ね縫合(overlap suture)を行う方法です。
しかしオトガイ下垂は、深い層の運動筋であるMentalis Muscleが下へ垂れ下がった状態であるため、皮膚と表情筋を後方へ引くこの術式では、下垂したオトガイ筋を上へ引き上げることができません。
したがって、あご下の切開による術式はオトガイ下垂にはまったく効果がなく、加齢による二重あごに適用される術式です。
あご下のシワが皮弁法で消失。


以前に口腔内切開によるあご先の形成を受けた後にオトガイ下垂が生じた場合、少なくとも2回以上の手術を受けた方がほとんどで、口腔内の粘膜層に付着している筋肉が非常に少ないか弱いため、ボリュームが大きく重いオトガイ筋を支えることは困難です。
また、あご先の骨の手術の際にすでに骨膜を剥離しているため、歯槽骨に付着している骨膜もほとんど痕跡が見当たらず、重いオトガイ筋を固定することは不可能です。
したがって、切開部の筋肉や骨膜に下垂したオトガイ筋を縫合することは、実施もできず、効果もない方法です。
上記の方法は、皮膚や皮下層、表情筋といった浅い層のたるみを引き上げる施術であり、深い筋肉層を引き上げる効果はないとはっきり申し上げられます。
* 筋肉縛り
下の図は、口腔内を約1cm簡単に切開した後、糸で引き上げる方法で、こちらも加齢による皮膚のたるみにわずかな効果が期待できる方法です。


Jorge L. de la Torre, M.D., Scot A. Martin, M.D., Mazin S. Al-Hakeem, M.D., Benoit C. De Cordier, M.D., and Luis Vasconez, M.D.
Birmingham, Alabama
このように、オトガイ形成術後に現れるオトガイ下垂(魔女のあご)を矯正するうえで、現在までに知られている最も効果的な方法はオトガイ挙上術(Mentalis Resuspension)です。
しかし、牛を失ってから牛舎を直すよりも、あらかじめ牛舎を丈夫にしておくことが大切であるように、オトガイ形成術(Genioplasty)を行う際にオトガイ下垂を最小限に抑える予防法を知っておくと、大いに役立つでしょう。

Clinical Cases
オトガイ形成術後に現れたオトガイ下垂の症状と副作用を矯正した症例を見ていきます。
















手術後:唇が上へ引き上がり、下の歯をすべて覆っている状態。


手術後は唇が楽に閉じており、オトガイ筋の盛り上がりや梅干しジワは見られなくなりました。


下唇が上へ引き上がった状態。


口を閉じたとき、あご先の筋肉の収縮がなくなりました。












手術後は口を閉じるときに力を入れないため、あご先の梅干しジワができません。
(It has been a month since the mentalis resuspension. The length of the chin has decreased, and she can close her mouth comfortably without straining her lips.
The walnut wrinkles on the chin have disappeared after the operation and she can close her mouth comfortably)


(The lower teeth are exposed on relaxed position before the operation, but they are not exposed anymore after the operation)


あごの長さが大きく短くなったことが分かります。
(The oblique view shows lip straining to close her mouth before the operation. But no more straining of her lips on closing the mouth after mentalis resuspension)


(There are clear difference of lower teeth exposure between the before and after the operation on rest position.)


(The lower lip and chin was elevated, and the length of the chin was decreased.
The lower lip was everted and downward slant, but it changed to pouted position. It looks more comfortable and natural.)
側面での露出範囲 (Lateral view)







力を入れると梅干しジワが現れます。






手術後は、唇が引き上がって水平を保っていることが分かります。
















この症例ではこのように梅干しジワがなくなりましたが、すべての症例でオトガイ筋挙上術後に梅干しジワがなくなるわけではありません。
以前の手術でのオトガイ筋の損傷の程度が結果に大きく影響し、手術のテクニックもその結果に大きな影響を与えます。


Doctor's Note
いわゆる「魔女のあご(Witch’s Chin)」と呼ばれるオトガイ下垂(Chin Ptosis)は、オトガイ形成術(Genioplasty)後に現れる副作用で、輪郭手術の際にオトガイ筋(Mentalis Muscle)が骨から剥がれた後、下へ垂れ下がることで現れる変形です。
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