機能的鼻整形の虚像(機能的鼻整形3点セットは受けないでください)


[ 鼻の機能 ]
- 呼吸と嗅覚がもっとも重要で、そのほかに吸い込んだ空気をろ過し、
温め、湿度を保ち、ほこりを取り除く機能などがあります。
- 鼻腔の奥、上部の粘膜に嗅上皮細胞が分布しており、この細胞が
嗅神経とつながり、脳でにおいを感じられるようにしています。
この嗅覚は手術で取り戻せるものではないため、
「機能的鼻整形」とは鼻呼吸を改善する手術と理解していただければ結構です。
機能的鼻整形は、鼻の内部で 空気の流れを妨げる構造を 修復する手術です。
鼻呼吸を妨げる構造 のうち代表的なものが
i) 鼻中隔弯曲症 ii) 肥厚性鼻炎(鼻甲介肥大) iii) 鼻弁狭窄
この三つを矯正するのが機能的鼻整形です。
※ここで重要なのは、この三つがすべて現れ、すべて矯正しなければならない場合もありますが、
このうち一つか二つだけの患者様がほとんどだということです。

数年前から、鼻の修正手術のご相談に来られる方のなかに、「機能的鼻整形」を受けた後、
鼻の機能はあまり変わらないのに、鼻が過度に尖って高くなり、突っ張りや圧迫感
のためにつらいと来院される方が増えました。
お話を伺うと、鼻づまりがあって病院に行ったところ、鼻中隔が曲がっている「鼻中隔弯曲症」が
あるために鼻が詰まり頭が重いのだ、そのため鼻中隔弯曲症の手術とあわせて、鼻甲介も
大きくなっているので切除術を行い、鼻弁も狭くなっている可能性があるので、これを再建する手術が必要だと言われたそうです。
その際、鼻を高くする美容手術まで行うとよいと勧められて、手術を受けたということです。
このように、機能的鼻整形3点セットとは
i) 鼻中隔弯曲症を矯正する鼻中隔矯正術
ii) 肥厚性鼻炎を矯正する鼻甲介切除術
iii) 鼻弁狭窄症を矯正する鼻弁再建術
この三つを一緒に行う手術をいいます。
ところが問題は、鼻が詰まるので機能を改善しに行ったのに、
鼻を高くする美容手術も一緒に行うと言われ、
機能3点セットの手術と美容手術をパッケージにまとめて手術することで、
結果的に過剰な手術になるケースがかなりあるということです。

鼻中隔とは鼻腔を左右に分ける中央の壁で、内部は軟骨で構成されています。
したがって鼻腔は、鼻中隔によって左右に分かれた天然の二連洞窟のような形です。
天然の洞窟は人工のトンネルと違って壁がまっすぐではなく、
当然、鼻中隔もまっすぐな人工の壁とは違って曲がりくねっています。
鼻中隔が曲がっている状態を鼻中隔弯曲症といいますが、
弯曲は誰にでもある程度あります。
しかし、鼻中隔弯曲があるからといって、誰もが鼻づまりになるわけではありません。
また、曲がりの程度が鼻づまりの程度に比例するわけでもなく、その理由は鼻粘膜にあります。
鼻粘膜が大きく腫れると曲がっていなくても鼻づまりが現れ、
曲がっていても粘膜が腫れていなければ鼻づまりはひどくなりません。
鼻中隔弯曲症を矯正する手術方法は、一般的に鼻中隔切除術と鼻中隔矯正術に分けられます。

[ 鼻中隔切除術 ]
L字型の鼻中隔を残し、中央部分を切除する手術
[ 鼻中隔矯正術 ]
曲がった鼻中隔軟骨をさまざまな方法でまっすぐに伸ばす手術
※鼻中隔切除術を過度に行うと、鼻背が低くなる
鞍鼻が生じることがあるため注意が必要です。

鼻甲介は、鼻腔の中で吸い込んだ空気をろ過し、温め、湿度を保ち、
ほこりを取り除く働きをする構造物です。
鼻中隔をまっすぐに伸ばしても、鼻甲介が大きくなっていると鼻腔が狭いため、
鼻づまりは解消されません。
鼻甲介が腫れるのは鼻腔内の空気の流れと関係があり、鼻中隔がまっすぐ
伸びていれば空気はスムーズに出入りしますが、鼻中隔が曲がっていると
空気が渦を巻いて入ってきて、渦を巻く空気が粘膜に
あちこちぶつかるため、粘膜が腫れてアレルギー反応を示すようになります。
これが肥厚性鼻炎であり、解決策は鼻甲介切除術 です。
つまり、鼻中隔弯曲症のある方は、鼻甲介が大きくなった肥厚性鼻炎を伴うことがよくあります。

[ 鼻弁とは? ]
鼻の骨格のうち、軟骨部分の外壁で鼻腔の広さと 空気の流量を調節する調節弁
[ 内鼻弁 vs 外鼻弁 ]
- 内鼻弁は、鼻背中間部の軟骨(外側鼻軟骨)の下側の入口部分
- 外鼻弁は、鼻尖軟骨の下側の入口部分
- 各弁は鼻孔の入口と鼻背の入口部分にある構造で、鼻腔に入ってくる
空気の量を調節する非常に重要な構造物
一般的に、鼻をひどく負傷した場合や鼻の手術を何度も受けた場合でなければ、
初めて手術を受ける方に鼻弁狭窄症があることはかなりまれです。
その理由は、右の図のとおり、内鼻弁は鼻背の軟骨に損傷があるときに狭くなり、
外鼻弁は鼻尖軟骨に損傷があるときに狭くなるためです。
生まれつき鼻背の軟骨や鼻尖軟骨が非常に弱く、幼いころから弁が弱かった方でなければ、
何らかの損傷や鼻の手術を受けたことのない方に鼻弁狭窄が現れることはまれだといえます。

機能的鼻整形を行うと言いながら、実際には美容手術をあわせて勧め、
その際に実損型医療保険の給付を受けるために鼻弁再建術を無理に行うことが問題です。
つまり、鼻中隔矯正術、鼻甲介切除術、鼻弁再建術などの
「機能3点セット」が同時に必要になるのは、以前に鼻を負傷してひどい損傷を受けたか、
鼻の手術の結果として弁が弱くなった場合でなければ、非常にまれだからです。
このように「機能3点セット手術」と美容手術を一緒に行う場合には
二つの必要条件があります。
1) 手術が複雑で多くの構造物に手を加える必要があり、非常に正確な手技と豊富な経験が必要
2) 軟骨移植を多く行う必要があるため、軟骨の採取量が多い
しかし実際には、この手術をあまりにも安易に考えて取り組む傾向があります。
その結果、必要のない手術まで行い、
鼻の骨格構造に過度に手を加えることで、さまざまな問題が生じることがあります。
たとえば、鼻中隔を切除しすぎて弱くなり鞍鼻が現れることもあれば、
鼻弁再建術として楔状移植や延長移植を行ったところ、
鼻先が曲がってしまうケース、美容目的で延長移植を行ったものの
大きすぎる移植物を当てたために鼻先が曲がったり、硬く固定された感じがあったりするケース、
軟骨が不足してメッシュやメドポアなどの人工物を使用し、
副作用が現れる症例を、少なからず拝見します。
そのほか、鼻先が高すぎたり不自然な見た目になったり、
鼻弁がかえって狭くなり、鼻づまりの症状が現れることもあります。

機能3点セットの手術と美容手術を同時に受けた後、
さまざまな問題が生じて来院された症例を分析し、
どのような問題が生じたのか、どのように治療したのか、
そしてその結果はどうだったのかを見ていきます。

PH
1年前、鼻づまりで病院を受診し、他院でワシ鼻と鼻中隔弯曲症をあわせて矯正することになりました。
ハンプ削り + 鼻背にシリコン + 鼻中隔切除術 + 鼻中隔延長移植(オープン法) + 鼻弁再建手術
ハンプが残り、鼻先が尖り、鼻が長い状態 => 1週間後に再びハンプ切除、鼻先の修正手術(オープン法)
CC
鼻が長く見え、鼻先は硬く固定され、尖って人工的でした
鼻筋と鼻先、鼻柱が曲がり、鼻孔は左右不ぞろい
P/E
・鼻が長く、鼻先が固定 ・シリコンが長く目立つ ・鼻中隔弯曲症が残存
手術所見
シリコンとL字型のMeshが出てきて、鼻中隔の残りが少なすぎたため、鞍鼻の可能性が高い状態でした。
=> 耳介軟骨で鼻中隔に楔状移植 / 耳介軟骨でコルメラストラット
シリコン + 被膜 + 鼻中隔SEG除去 + 下垂矯正 + 複合再配置(オープン法、静脈麻酔)
*手術中にメッシュプレートが出てきて、それにより鼻中隔の損傷がひどかったため、取り出した鼻中隔軟骨を当てて補強しました。

L字型のMeshが両側で鼻中隔の先端部分にありました。
これを除去すると鼻中隔軟骨が1/4程度しか残っておらず、鞍鼻の可能性が高い状態でした。

(A) 鼻の中から取り出したシリコンプロテーゼとMesh plate。
Meshは非常に硬い人工物で、強い異物感を感じるようになります。
(B) 残っている鼻中隔軟骨ですが、鼻中隔を切除しすぎたために、
鼻中隔が弱くなり、鞍鼻のリスクがありました。
(C) シリコンとMeshを除去した直後に、このように鞍鼻が見られました。
そのため耳介軟骨を採取し、楔状移植と鼻先の支柱を立てました。

採取した鼻先用の軟骨と、楔状移植が見えます。

手術前
シリコン周囲の炎症反応により、シリコンの輪郭がはっきりし、鼻筋が広く厚くなっていました。
鼻先がつままれたような形。鼻先は硬く、固定されていました。
手術後
鼻背が自然になり、つままれていた鼻先も自然にほぐれました。
鼻先が柔らかく、動きます。

曲がっていた鼻柱と鼻孔が手術後に完全に矯正され、
つままれていた鼻先が自然に広がりました。

鋭く尖っていた鼻先が柔らかく自然になりました。

鞍鼻が懸念されましたが、耳介軟骨を用いた楔状移植と鼻先の支柱により、鞍鼻になることなく
自然な鼻筋になりました。鼻先が自由に動く、いわゆる「豚鼻」もできるようになりました。
* 注意事項 : 機能的鼻整形とあわせて美容手術を行うと、必要のない
シリコン、Meshなどの人工プロテーゼが入ることで、
さまざまな副作用や不自然な形が残ることがあります。

PH
3年前、 他院で、機能3点セットの鼻整形 + シリコン + 鼻中隔CS(オープン法)
CC
鼻先が右に曲がっていました。手術前より呼吸がやや不快。特別な症状はなし。
P/E
シリコンプロテーゼが曲がっていました。鼻先は硬く固定されていました。
手術所見
シリコン + 被膜 + 鼻中隔SEG除去 + 下垂矯正 + 複合再配置(オープン法、静脈麻酔)
*手術中、鼻中隔と鼻尖軟骨の間から、延長移植物としてメッシュプレートが出てきました。
それにより鼻中隔の損傷がひどかったため、取り出した鼻中隔軟骨で補強しました。

鼻中隔延長移植が両側に当てられており、片側は鼻中隔軟骨、反対側はMeshでした。
二つを除去した後、鼻中隔軟骨は弱くなった鼻中隔の中間部に当てて補強しました。
延長移植のために鼻中隔の先端部分に二枚の添え木を当てると、
鼻腔の入口が狭くなり、呼吸が苦しくなります。


鼻背の曲がったシリコンプロテーゼがなくなると、鼻背がまっすぐで自然になりました。
患者様は、抜去と再配置の手術後に鼻づまりがなくなったとおっしゃっています。
このように、鼻中隔切除術や鼻弁再建術などの機能的鼻整形3点セットの手術の際に美容目的で
隆鼻術と延長移植を行ったことで、かえって鼻筋と鼻先が曲がり、鼻づまりが生じるケースがしばしばあります。
そのため、機能的鼻整形におまけとして美容手術を行うと、丁寧に行うことができず、
その結果もあまり良くないことを多く拝見します。

鼻中隔切除術により鼻中隔が沈んだ鞍鼻が生じていましたが、
シリコンで覆われて隠れており、抜去手術の後に鞍鼻が明らかになりました。